この記事でわかること
・陣痛の仕組みと進み方
・陣痛の痛みを和らげる方法
・無痛分娩についてのあれこれ
「妊娠した!」と判明した日からいずれはやってくる出産の痛み。その痛みを不安に思ったり、私に乗り越えられるかしら、とネガティブになったりの日々が妊娠中、事あるごとに波のように押し寄せます。経験がない未知の世界だけにただただ不安になるのです。
でも、ひとつひとつ痛みの仕組み、メカニズム、対処法などの知識をつけることによってその不安は心の準備へと変わっていくはずです。
今回は妊婦さんの出産時の痛みについて詳しくお知らせし、最善の対処法を伝授いたします。これであなたも出産のこころの準備が必ずできることでしょう。
目次
1.陣痛の起きる理由は?
陣痛とは1時間に6回程度の規則正しい子宮収縮のことで、赤ちゃんを押し出すためのものです。お産が近づくと赤ちゃんを外に押し出すために子宮が収縮し始めます。
子宮が収縮することによって刺激に加え、子宮口が押し広げられる刺激もプラスされ、それらが脳へ伝達されることにより「痛み」となるのです。その「痛み」がよく例えられるのは「鼻からスイカを出すくらい痛い」というフレーズ。
私も出産を体験したひとりですが、「地中に埋まった3トントラックをひとりでロープを使って引き上げている」ような感覚でした。このように言うと不安は募る一方となってしまいますよね。逆の体験談として「思うほど痛くない」という方もいて人それぞれの感じ方があります。
ということで、陣痛とは実際にどのような痛みでどのような程度なのか、そもそもなぜ陣痛がおこるのかそのメカニズムを解き明かしていきましょう。

出典:https://st.benesse.ne.jp/
■陣痛のしくみは様々
まずは陣痛の仕組みです。出産前の数週間で体はホルモンプロゲステロンの分泌を抑制し始め、他のホルモン(子宮頚部をやわらかくさせるプロスタグランジンや、子宮の筋肉を収縮させるオキシトシンなど)の分泌量を増加させていきます。この「オキシトシン」というホルモンの量が増えると陣痛が促進されると言われています。
こうして、お産間近になると赤ちゃんを押し出すために子宮は収縮し始めます。この収縮が「陣痛」です。それと同時に子宮口が押し広げられていきます。この時、子宮口あたりが焼けたように熱く感じるという方もいます。その2つが合わさって痛みを感じるようです。
陣痛がいつ始まり、どのように進行するのかは人それぞれで予測がつきません。ですから子宮口の開き具合、赤ちゃんの大きさ、初産か経産かによっても差が生じます。
出産は6~24時間、またはそれ以上かかることもあり陣痛がいつ始まりどうやって進行していくかは個人差が大きいのです。子宮口が開くにつれて陣痛の痛みはどんどん増し、子宮口が大きく開くと力をいれずにはいられない「痛み」となります。
■陣痛の進行
出典:http://www.jsoap.com/
「陣痛」とは同じところがずっと痛いのではなく痛みの場所も強さもお産が進んでいく中で変化していくのです。
・分娩第一期
分娩第一期は赤ちゃんが通る道を作るために子宮口が徐々に開き始めやわらかく、薄くなっていきます。この時、子宮の入り口が摩擦で出血したものを「おしるし」と呼びます。また、羊水蒙が破れると破水します。
子宮口が3cm開いてから全開(10cm)までの間、出産の中で最も時間がかかる最初のステージです。(初産で約6時間~14時間)多くの場合、5分~20分間隔で、子宮収縮の波がおこります。はじめの頃の痛みはそんなに痛くなく陣痛の間隔がせまくなっていくにつれて強くなります。子宮口が約4cmまで開くと子宮の動きはより活発的なり8cmの頃には痛みはピークに達します。
・分娩第二期
分娩第二期には子宮口が全開の10cmになってから、いきむことにより赤ちゃんを押し出すまでのことを言います。初めてのお産で30分~2時間以内が一般的です。第一期ではいきんではいけなかったのですが、ここからはやっといきんでよい時期です。
子宮の強い収縮が起こる毎に赤ちゃんは下にやってくるので、強い陣痛の波にあわせて何度もいきみます。
生まれるとき、赤ちゃんの頭が見えてくると後は数回のいきみで顔、肩、身体がでてきますよ。
・分娩第三期
赤ちゃんが完全に生まれてから胎盤が出るまで(5分~30分)は陣痛はほとんどありません。第二期のピークを体験した妊婦さんにとっては無いに等しいくらいの小さな痛みです。胎盤はこれまで子宮の中で赤ちゃんに酸素や栄養を送ってきた重要な器官。へその緒を切ると胎盤は自然と子宮から離れるので赤ちゃんを押し出すと同じように軽くいきむと出てきます。そして、赤ちゃんの最初の呼吸により出産は無事終了するのです。
・後陣痛
出産も終えたというのに、子宮が元の状態に戻ろうとするとき、痛みが出る場合があります。これを後陣痛といいます。痛みには個人差があります。ちなみに筆者は生理通くらいでした。軽く我慢できるくらいです。これが4日~1週間程度続きます。
2.陣痛の痛みを和らげる方法

陣痛の痛みを和らげる方法があるならまずはそれを知りたい!と思うでしょう。陣痛にまつわる疑問を解決し、陣痛の痛みを逃すコツを知り、今から出産に備えておくことをお勧めします。
■本陣痛?前駆陣痛?
陣痛とは一般的に「本陣痛」のことを指し、分娩前におこる痛みの「前駆陣痛」とは区別しておきましょう。この2二つは違うものなのです。
・前駆陣痛
前駆陣痛は本格的な分娩が始まる前の準備としておこります。前駆陣痛は赤ちゃんを押し出すためではなく、赤ちゃんの通り道をやわらかくしておくためにおこります。
痛み自体はそれほど強くなくお腹が張っているだけくらいの感じ方の人もいるでしょう。痛みの間隔が不規則で安定していません。
・本陣痛
本陣痛は赤ちゃんを押し出そうとする子宮の収縮による痛みです。この痛みの間隔は規則的で除々に間隔が短くなっていくのが特徴。このことを踏まえ、痛みの起こる頻度をみていきましょう。
最初は30分休憩して数分。→20分休憩して数分痛い。→10分休憩して数分痛い。
10分間隔になった時が産婦人科へいくタイミングです。このようにして陣痛の痛みのくる間隔が短くなっていきます。
本陣痛の持続時間はお産が近づくにつれ長くなり、陣痛の間隔は短くなるのです。最初は持続時間の短い陣痛が10分間隔できていたものが子宮口が完全に開き、分娩の第二期になると今が陣痛なのかどうか、ずっと痛いような状態に入ってきます。助産師さんが「今が陣痛ですよ~」という声をかけてくれたら「今、陣痛なんだ」と知るような状態になっていることがほとんどでしょう。
陣痛の間隔をカウントする方法
本陣痛はずっと同じように痛いわけではなく、子宮の収縮に合わせて痛い時と痛みがおさまる時を繰り返します。出産に向けて大切なのはこの本陣痛の間隔をカウントすることなのです。これには協力者が必要でしょう。痛みがピークから次の痛みのピークが始まるまでの時間を測ります。痛みが始まったとおもったら時計をみて○時○分~とメモに記入しておきます。このようにして間隔を測っておくのです。これは後で記念のメモとなるかもしれません。最近では陣痛アプリをダウンロードしておいてそれを使って記録できるようですね。チェックしておきましょう。
陣痛は痛くなったからといってお腹に力を入れてぐーっとこらえる感じはいきんでしまっていることになります。ですから「いきみ逃し」が大切なのです。早い段階でいきんでしまうと会陰部や膣内で裂傷をおこす心配があるのです。
前駆陣痛から本陣痛への流れは人によって様々で前駆陣痛後、すぐに本陣痛が始まる人もいれば、数日たってからくるという人もいます。ですので、「痛い」と思ってすぐに病院へ行くのではなく痛みの間隔や痛みの見極めが大切です。
出典:http://lovemo.jp/
■体を温めたり、適度に動かす
ホッカイロや温かいタオルなどで腰を温めると痛みが和らいだという意見もありました。パパやご両親に頼んで両手で温めたりさすったりしてもらうと血行がよくなり楽になります。ですので、出産準備の荷物にホッカイロをプラスしておくと良いかもしれません。
その他、身体を動かすというのも良いようです。
ある妊婦さんの体験では陣痛がきてから行った病院内での運動がお産に良い影響を与えたという体験があります。陣痛の合間にベッドの周りをぐるぐる周り、痛みがきて立っていられなくなればベッドに横になる。また歩く。その繰り返しを続けたらすぐにお産で、かなり出産までの時間が短くて済んだそうです。「陣痛の合間に動くと赤ちゃんが下に降りてくるということを聞かれることがあると思いますが、これはかなりの効果があるようですね。
■集中してしっかり息を吐く
陣痛中に息をすることに意識をもっていかなかったママの中には過呼吸になってしまう人もいます。ですので、ひたすら息を吐くことに集中して長くゆーっくりふぅっと痛みを呼吸と一緒に外に出してしまうイメージ。間違っても下腹部に力をこめて我慢することは避けましょう。喋ったり、叫んだりすると余計痛くなります。黙って息をすることだけに集中しましょう。
【呼吸の体験談】
私は過呼吸になりやすい体質でした。初産のときはまさに過呼吸になりました。だから二人目のときは意識して、ひたすら息を長く細く吐くことをやってみました。
あと、頭の中で赤ちゃんがスルスルっと降りてくるイメージを作りました。すると、「え、もう終わったの?」というくらいあっけなく出産は終了。初産のときの経験から自分でつかんだこつです!
初産の時、痛みで気が動転して、痛みがきたらパパを罵倒して、壁もたたいて大声で「痛いー!」問いっていました。
二人目は心の準備もできて口から長く息を吐くことに集中。すると痛いけど痛みの波に乗れた感じでパパもほっとしていたことでしょう。
■なるべくリラックス
病院によっては事前にバースプランを作っておいて、いざ陣痛がきたらそれにのっとって希望した環境にしてお産を進めるというところもあります。リラックスしやすい物を周りに置き、環境を整えましょう。陣痛中に好きな音楽を流したり、アロマオイルを嗅いだりしながら、心が休まる方法で自分なりのプランをたててみるのも良いかもしれません。
初めて陣痛を体験しました。自分でCDプレーヤーとCDを持参。いざその時になったらCDどこですか?と看護師さんに聞かれたときは痛みはMAX.「もういいです」と答えるのがやっとでした。音楽を聴くというところまで意識がむかなかったというのが現実でした。二人目のときはもう、CDは持っていきませんでした。
この様な体験談もあり、痛くなる前の準備が大切のようですね。
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3.先輩ママの体験談
私はあぐらをかいて前後にゆらゆら揺れる動作があっていたみたいで楽でした。頭がしびれるくらいの痛みもゆらゆらすることで意識を分散させることができていたと思います。そして、痛みがピークに達してからはスルスルっと20分で産まれてきてくれました。痛みが上がって行く時に気持ちを他へ向けるというのは結構いける!と思いましたよ。
早朝、おしるしかなと思う出血があり、その日の夜に陣痛スタートでした。翌日の朝には出産できました。助産院で分娩予定だったけれど赤ちゃんの首にへその緒がまきついているということで病院へ緊急搬送!病院での出産となりました。
時系列で…
朝9時・・おしるし。散歩などの軽い運動。シャワーを浴びて髪をしっかり洗っておいた。
夜11時・・ちくちくした痛み(前駆陣痛)。でも眠かったのでとりあえず寝ました。痛くなって途中で目が覚めました。助産院へ。
翌朝5時・・へその緒が首に巻き付いていることが判明。病院へ救急車にて移動。
7時・・病院で検査して、陣痛室にて痛みに耐える。いきみ逃しがうまくできない。
10時・・破水。先生がお腹に手を入れてぐるぐる。目がまわりそう。「よし」という先生の声と共に普通分娩が可能に!
10時40分・・出産!息子と対面。
38週で子宮口は少し開いていると言われ、39週の健診では3000gを推定で越えていると言われた。
もういつでも産まれていいよと準備万端でしたが、ずっと陣痛はなく40週の診察でも「まだやね~」と先生も言われ焦る。結局、陣痛がきたのは予定日を4日過ぎた日。
夫が休みで私自身リラックスしていた時、「ん?何か痛みがうっすら」。うっすらだったので前駆陣痛のことを聞いて知っていた夫が「まだやろ。ご飯食べに行こう。」と外食へ。でもお料理が運ばれてきたちょうどその時、強い痛みが。ダウンロードしていた陣痛アプリを使ったらこの時点で17分間隔できていました。それでも夫は呑気なもので「まだやろ」と請合ってくれません。
家に帰る途中、歩けないほどの痛みに襲われやっと本陣痛と分かってくれました。自宅のトイレで血のかたまりが。病院に連絡すると陣痛が10分間隔をきったらもう一度連絡するようにといわれました。その間にお風呂に入り、寝てはみたものの、痛すぎて眠れずそのうち7分間隔になったのであらかじめ予約しておいた陣痛タクシーで病院へむかい、すぐ出産となりました。
明け方からお腹と腰の辺りがズンズン重い感じがしていました。寝返りがつらくて、痛くて。その後、昼ごはんを食べてソファでゆっくりあぐらをかいて座っていたら「パシャっ!」とした感覚がありました。生理の大量という感じでした。あわててトイレで確認すると下着が濡れていたけれどおしっことは違い、色はほんのりピンクの透明。しばらく夜用ナプキンをつけて様子をみていました。痛みは全くなかったです。その後も水は出てくるので病院へ電話。すぐに来てくださいと言われそのまま入院となりました。
「破水したら細菌感染の危険があるので必ずすぐ病院」とあとから知りました。
皆さんも破水したらすぐに病院へ連絡してくださいね。前日に、入院バッグの準備はしていたのと以前から陣痛タクシーの予約はやっておいたのでおちついて行動できました。
4.無痛分娩という方法
出典:https://jun1ro1210.com/
出産の選択肢として「無痛分娩」を考えている人は無痛分娩って本当に痛くないの?事故のリスクは?麻酔だから赤ちゃんへの影響はないの?など気になることは沢山ありますよね。
アメリカやフランスでは積極的に無痛分娩を行っています。日本での普及率は低いです。無痛分娩は麻酔によってお産の痛みをなくして分娩を行う方法のことをいいます。
■無痛分娩の種類
・計画無痛分娩
これは計画的に予定を立てて無痛分娩で出産します。前もって出産日を決めることでパパや家族の立会いスケジュールを立てやすく、上の子が居る場合でも預け先を探すにしても
都合が良いですね。
・自然陣痛を待っての無痛分娩
計画とは反対に自然に自然陣痛が起きるのを待ってから無痛分娩を行うケースがあります。自然陣痛を待つケースで対応できないのは、お産の進行が早くて麻酔のカテーテル設置が間に合わない場合です。
麻酔が開始されるまでは通常の出産と同じく痛みを感じます。カテーテルの準備をした後はベッド上で過ごし、食事はせずに点滴で管理。無痛分娩中は陣痛をお腹の張りと感じることができるので自力でいきんで出産します。
無痛分娩の際、会陰切開する確率はかなり低くなります。赤ちゃんが生まれたあとすぐに抱かせてもらえて授乳においても無痛分娩が妨げになることはありません。
■無痛分娩のメカニズム

出産は段階的に痛みがきます。まず、本陣痛と赤ちゃんの頭によって広がる膣、外陰唇と会陰、圧迫を受ける肛門などに出る痛みです。
無痛分娩はこれらの痛みを総合的に和らげる効果があるのです。
無痛分娩の鎮痛方法は2種類あります
・硬膜外麻酔(こうまくがいますい)
硬膜外麻酔は下半身麻酔の中で一般的なものです。無痛分娩に使用するときは、背中の腰に近い部分に痛み止めを注射。そこから針を入れ、硬膜外腔にカテーテルを挿入。そして針を抜く。カテーテル(管)だけが残り、背中にテープで固定。ここから麻酔薬を注入。この時、副交感神経が優位になるのでママさんはリラックスしてお産できますね。
・静脈点滴麻酔
硬膜外麻酔が使えない人の場合、医療用麻酔を点滴から静脈の中に直接投与。また、ガスの麻酔薬を吸うケースもあります。
■リスクもある
使用される麻酔の種類による特徴やリスクをまとめてみましょう。
【硬膜外麻酔(局所麻酔)の場合】
鎮痛効果 |
高い |
ママの状態 |
意識がはっきりしている |
ママへの副作用 |
脚の感覚がなくなる 一時的な血圧低下 排尿困難 頭痛 かゆみ、など |
赤ちゃんへの影響 |
ほとんど現れない |
【静脈点滴やガスの麻酔(全身麻酔)の場合】
鎮痛効果 |
やや弱い |
ママの状態 |
眠気が起こる 呼吸が弱くなることもある |
ママへの副作用 |
喉の痛み 声のかすれ 頭痛 吐き気 めまい 腰痛 目の違和感、など |
赤ちゃんへの影響 |
眠そう(眠気が起こる) 呼吸が弱くなることもある |
参考:https://www.babys-room.net/
長時間、同じ体勢をとるので腰痛がおこったりします。硬膜外麻酔は胎盤を通過して赤ちゃんへ作用しないのでスリーピングベビーになる心配はないです。静脈点滴麻酔はママの血管を通って薬が身体にまわるので赤ちゃんへも作用が出ます。
その後、麻酔が切れて薬の影響がなくなればママも赤ちゃんも元気になります。
5.まとめ

さて、ここまで出産時の陣痛(痛み)についての情報をお伝えしてきました。陣痛は痛いものですがこの力はまさに赤ちゃんを外へ押し出そうとしてくれるありがたく力強い力です。これがなければ、赤ちゃんを手術で取り上げるしか方法はありません。産道は赤ちゃんにとって狭く、ゴツゴツしていてとても大変な道です。ママが力を入れて固まるともっと通りにくい道へと変わるでしょう。
ママと赤ちゃん、二人のがんばりをみせる、この一生に一度の陣痛を嬉しいものと捉えましょう。赤ちゃんを連れてきてくれる喜びのウェーブ「陣痛」を知り、そして乗り切りましょう!
ライター:清水