うちの子もしかしたらADHD?具体的な症状やその対応策・体験談をご紹介

この記事でわかること
・ADHDの症状や特徴
・ADHDの治療方法
・ADHDの年齢別の向き合い方

“ADHD”という言葉、以前はあまり聞き覚えのない言葉だったけど、最近耳にするようになってきたなという方も多いと思います。

筆者が小学生だった20年ほど前は、授業中落ち着かなかったり、急にトイレに行ったり、じっと席に座れない子供もクラスにはいて、同じ授業を受けていました。当時はその子供達が特別だとは思わず、特に気にもしていなかった気がします。今考えると当時の私のクラスの中にも、ADHDの子もいたのかな~と思ったりします。それが一種の発達障害だという意識は当時の大人もあまりなかったのではないでしょうか。

最近ではそういった子どもたちをちゃんと理解し、適切な対応をして、成長させていくべきだという考えが重視されるようになってきました。ADHDが様々なメディアで紹介されていますよね。今回は、具体的にADHDがどういった症状なのか、その特性と治療方法、また年齢別の向き合い方などをご紹介していきます。

1. ADHDとは

■主な症状と特徴

ADHDは正式には「注意欠陥多動性障害」と呼ばれています。
英語ではAttention deficit hyperactivity disorderと表現し、その単語の頭文字をとってADHDと呼んでいます。ADHDは発達障害の1つで、主に3つの症状が特徴としがてあげられます。その3つの症状とは多動性、衝動性、不注意を指しています。
ではこの3つの症状を具体的に見ていきましょう。

多動性
・他の子供達が大人しく座っている場面で、じっと座っていられなかったり、手足をそわそわ動かしたりする。
・おしゃべりが止まらない。自分でコントロールできない。
・力の加減がわからなくて、過激になったり、動いていないと気分が落ち着かない。

衝動性
・あまり物事を深く考える事ができず、すぐに行動にでてしまう。
・順番を守るよう伝えても、それが我慢できず、横から割り込んだりしてしまう。
・自分の感情を抑えるの難 しく、他の子供がしていることを邪魔したり、取り上げたりする。

不注意
・忘れ物をしたり、物を無くしたりする事が多い。
・片づけができない。
・音などに敏感に反応したりして集中力が続かず、気が散りやすい。

主な症状は上記のようなものが挙げられますが、理解しておくべき事は、これらは全て意図的に行っているものではないということです。また育ってきた環境や教育が影響しているわけでもありません。子供や自分をせめず、どうこの特性と向き合っていくか、前向きに考えていきたいですね。

■原因とされているもの

ではいったい、ADHDという特性を持った子供達の原因は何なのでしょうか。
結論から言うと、ADHDのはっきりとした原因というのは今のところ分かっていません。疑われている要因を挙げてみるならば、遺伝的要素、先天的な能の機能低下、妊娠期間中にアルコールを摂取したり喫煙を行った場合、胎内にいるときに母親が摂取した何かしらの化学物資による影響など、がいわれています。
ADHDの行動の様子から、原因をこれまでの育て方やしつけではないかと思うお母さんもいらっしゃると思いますが、直接の原因がそれだという説は現在ありません。
自らを責めるのではなく、生まれつきの特性だとしっかり受け入れ、適切な対応を行う事が大事だと思います。

■ADHDは治る?

では、ADHDという発達障害はなんらかの治療を行えば完治できるのでしょうか?残念ながら答えは「NO」です。現段階では、ADHDは薬や手術などで治療し治るということはありません。ただADHDを学ぶ事、理解することで様々な場面で適切な対応を行い、より豊かな生活を送っていくことは可能です。また症状を緩和する治療薬は存在します。

2. ADHDチェック診断

自分の子供が実際どうなのか、確認したいという方のために「ADHDチェック診断」というものがあります。ADHDを診断するには、先にお伝えした3つの主な症状(多動性、衝動性、不注意)が子供に見られるかどうかを確認することが重要になります。そのうえで専門医に相談し、診断してもらう方法がまず一つあります。
またADHDに関する様々なWEBサイトで、ADHDチェックリストを掲載してありますので、そちらを活用してみるのも一つの方法です。

出典・参考リンク(親と子どものためのADHDNAVI)
https://www.adhd-navi.net

こちらのサイトは15個の項目に回答するだけで、簡易判定をしてくれます。

3. 親としての向き合い方

じっとしていない、片付けができない、などADHDの特性が日常生活では
分かりにくい部分を持つという側面があるがゆえに、思わずしつけを厳しくしてしまっているという方も多いのではないでしょうか。しかしADHDの子供たちは、ただ厳しくされたりするだけでは、症状を改善することはできません。やはり重要なのは、その特性を受け入れ理解し、適切な対応を行うことです。
ではどういった対応が適切なのか、ここでご紹介したいと思います。

■集中力を高め途切れにくい環境を整備する

ちょっとした音や出来事に敏感に反応してしまう特性があるため、まずはそういった刺激物を周囲からなくす環境をつくりましょう。
例えばお絵かきをしているときは、テレビは消して、周りにおもちゃなども置かないようにするといった工夫などです。また三角コーナーは視覚的な刺激が入りにくいので、何か課題に取り組んでもらう時には適している場所だと言われています。

■具体的なお手本を見せて指示をする

ADHDの子供たちは言葉で言ってもなかなか理解してくれない場合があります。ですので、目に見える形で指示することが重要です。例えば絵に描いてみたり、チェックリストを作ってみたりするのも有効だと思います。

■上手な褒め方

子供はやはり褒められることが大好きです。何か物事がうまくできたらオーバーでもかまいませんので抱きしめたり、笑顔を見せたりして褒めることは有効です。またできるだけ早く褒めるといのもポイントの一つです。

■叱るのではなく、落ち着いた注意を

子供が好ましくない行動をした場合、叱ってしまうのは良い方法とはいえません。
叱ることで子供に刺激を与えてしまい、正しい方向へ導くことにはつながっていきません。まずは、その場ですぐ注意したりするのではなく、少し様子を見てみましょう。
また、興奮して収まらない場合、「こうしてみてはどうかな」など違った行動を指示し、
その後に良い行動が見られたら、褒めてあげる。褒めることでよい方向へお子様を導いていきましょう。

■ADHDの子を持つ親の体験談

では実際にADHDのお子さんを持つ親御さんの体験談をご紹介したいと思います。

Aくん(6歳)【多動タイプ】

A君は、歩き始めるようになってきた頃から、休むことなく動きまわる元気な子でした。
ちゃんと話もでき、家族の話すことも理解できていましたので、そういう性格の子なんだとお母さんも思っていました。ただ幼稚園に入園してからは、園のお友達のおもちゃを奪ったり、たたいたり、先生の話を聞かずおしゃべりを続けるなどの行動が目立つようになってきました。その頃のお母さんは、A君が男の子だから活発なのか、何か問題があるのかなど判断がつかず、悩んでいました。

そしてA君が小学生になり、授業参観に参加したときの事です。
A君は先生の話をちゃんと聞くことができず、自分の主張を続けたり、席に座っているときも落ち着きなくもぞもぞと体を動かしていました。そういった行動を見かねたお母さんはA君に注意をするのですが、いくら注意してもA君の落ち着きのなさは改善されませんでした。悩んでいたお母さんは近くの「児童精神外来」を紹介され、そこで幼少期からのA君の行動を医師に相談することにしました。

医師にこれまでのA君のことを振り返って話をするうちに、お母さんは「自分のしつけがいけなかったのでは」と自らの責任ではないかと考えるようになりました。
しかし、話を聞いていた医師は「A君はADHDに近い症状があるようです。これは今までのしつけや環境のせいではありません」とやさしくお母さんに言いました。

何度か、診察や検査をし、やはりA君はADHDだろうと医師は診断しました。
お母さんはADHDという障害があることを始めて知り、自分の育て方が原因でないと分かりほっとした反面、ADHDという障害がどういうものか分からず不安にもなりました。それでも、ADHD事を理解するようになり、A君に対しても落ち着いて対応できるようになっていきました。今では学校や医師など周りの人にも理解し、支えてもらいながら、A君と一緒に前向きに生活できています。

Bちゃん(7歳)【不注意優勢タイプ】

Bちゃんは、小さい頃からぼーっとすることが多く、お母さんが呼びかけても気づかずにいたり、話をしている途中でうわの空になったりすることがありました。
幼稚園の頃は、お友達とも仲良く過ごしていたので、特に気にすることもなかったのですが、小学校に入り、授業が始まると、ぼーっとすることが多くなりました。授業もきちんと聞いていないようなので、読み書きができなかったり、忘れ物が多くなり勉強についていけなくなってしまいました。

普段の授業態度や学力の遅れを気にした担任の先生から小児科をすすめられ、
お母さんは受診することにしました。病院ではADHDの検査が行われ、医師の診断は「不注意優勢のADHD」だということでした。その診断結果にお母さんはとまどいましたが、医師からのアドバイスやADHDを理解していくうちにBちゃんへの対応を変えたり、環境を整えていくことができ、うまくBちゃんを見守ることができるようになりました。お薬も併用し、ADHDの特性を踏まえた対応を行っていくにつれ、Bちゃんにも自信がついてきて勉強にも意欲的に取り組むようになっていきました。

お母さんは「本格的な学習が始まる前に、対策が取れてよかった。元気に登園する娘の姿を見れているので本当にうれしい」とADHDを早期に発見して対応できたことを喜んでいました。

こういった体験談から、いかに自分の子の変化に気づくことが大切で、またその子の特性に合った対応ができるかで先の結果が変わっていくという事がわかりますよね。ADHDの特性から気づきにくいという点はあるようですが、何か変かも?と思ったら、周りに相談するのも大切です。

4. 治療方法

ではADHDの治療方法として、どういったものがあるのでしょうか。
主に二つあげられます。一つが「薬物療法」もう一つが「行動療法・心理療法によるアプローチ」です。
その二つを詳しくみていきましょう。

■薬による治療

ADHDは、脳内の神経伝達物質の作用が不足気味の傾向があるため、その神経伝達物質を増やす働きをしてくれるお薬が治療に使われます。お薬を使用する場合の注意点としては、まず薬物療法は通常幼児期の子供には使用しないのが一般的です。

また一人ひとりの子供によってお薬の適正な量も変わっていきますので、医師の指示通りに適切に服用することが大切です。ADHDの子供の中には上記で説明したようなお薬の効果がないこともあります。そのような場合には、気分安定剤、抗精神病薬、抗うつ薬などが処方されることもあります。

■行動療法・心理療法によるアプローチ

お薬での治療以外に行われる方法として、「行動療法」と「心理療法」があります。
「行動療法」は本人に物事の良し悪しが判断できるように、導いていく治療法です。
本人が何か間違ったことをしてしまったときに、どう対応すればその行動が間違いだということを理解してもらえるかを考えたり、また良い行動をしたときに、褒めてあげる事で、本人に自信を持たせ、少しずつ、正しい行動がとれるように周りがサポートします。

この行動療法では「褒める」というのがポイントになります。褒める事で本人が正しい行動を行うことに意欲的になっていくことがあります。簡単なことがクリアできただけでも大いに褒めてあげることで小さい達成感が積み重ねられ、成長へとつながっていくのです。
もう一つの「心理療法」はADHDの子供の心のケアを目的としています。

ADHDの特性を持った子供たちは、何かしら失敗を繰り返していたり、挫折を経験しているので、そういった心の傷を負ってる子が多いと思います。その点をケアし、不安をなくしていくことが自己評価を高め、自信とやる気につながっていきます。

ADHDの子供たちを含めた、発達障害のある方たちにとって重要なことは、まずそういった障害があることを理解すること、そして彼らがよりよい生活を送ることできる環境を社会全体で作っていくことです。周りの大人が、優しい目でゆっくりと成長していくのを見守っていくことが大切なのですね。

5. 年齢を経るごとに症状は変化する

ADHDの子供は、成長するにしたがって、その行動の特性が変化していきます。
下記では、それぞれの年齢でどういった症状が主で、それに対してどう対応すればいいのか、ご紹介したいと思います。

■1~5歳 幼稚園・保育園での対応

1~3歳のころはとにかく落ち着きがなかったり、かんしゃくをすぐに起こしたりします。
保育園や幼稚園に通う頃になると、先生の言うことが聞けなくなったり、席にじっと座れなくなるなどの行動が目立つようになります。このころの年代の子供に有効なのが、めいいっぱい外で体を動かすということです。しっかり体を使って運動し、発散させるのです。

発散させることによって、自己満足感が高まり、家の中で走りまわったり落ち着きがないなどの症状を抑える効果が期待できます。子供の興味のあるものは何かを把握し、自由に遊ぶ時間を作ると効果的です。また、保育室内はなるべくシンプルにして、子供の興味を刺激するのをなるべく防ぎます。さらには、子供が主役になれる時間を作ってあげましょう。そういう時間が持てることで、自己肯定感が生まれ、今後の友人関係などにも良い影響を与えるでしょう。

■6~12歳 小学生の学校での対応

小学生頃になると集中力がなく、興味があちらこちらに移り変わり、忘れ物も多くなります。またおしゃべりがとまらなくなったり、一方でほかのお友達の話が聞けなかったり、お友達と仲良くするのも苦手です。この頃の子供にとって必要なことは、家族や学校、周りの人々が協力し、子共の苦手なことに寄り添い、強要するのではなく、子供が自発的に行動できるようにサポートしていくことです。

忘れ物が多いのであれば、学校の準備を一緒に手伝ってあげたり、宿題をしないのであれば、宿題に集中できる環境を整えてあげるなど、粘り強く、継続的なサポートを周りのみんなで協力して行いましょう。

■13~18歳 中高生の学校での対応

13歳以降の思春期の時代になると、小さいころのような落ち着きがなかったりのような多動性は少なくなる傾向がありますがやはり集中力がなく、学習意欲が低下します。その連鎖で自信をなくし、周りとの関係を拒み、自らの世界へ閉じこもる場合もあります。

また、母親とも距離を置くようになるため、直接のサポートが難しくなってきます。子供が反抗的になったとしても、急に手を放したりせず、助言をするなどのサポートを行いましょう。学校での様子を把握するためにも、同じクラスの親同士で連絡を取り合ったり、学校の役員を引き受け、そういった場で子供への理解を求めるのも有効だと思います。

6. まとめ

いかがでしたでしょうか。自分の子がADHDではないとしても、周りにそういった子供がいた場合、適切な対応ができる社会をみんなで作っていきたいですね。
そのためにも、ADHDがどんな特性を持っているのか、知ることが重要ですし、また知りえた知識・情報を周りへ伝えていくことも、大切なことだと思います。